セラピスト歴20年を振り返る②就活編2「サラリーマンにはなれない」――堕落した大学生が、セラピストへの道を歩み始めた日

あの衝撃的な初体験から、私は見事に足つぼマッサージの虜となってしまった。

週に三回。気がつけば、その薄暗い地下街の店舗へ吸い込まれるように通い詰めている自分がいた。 朝からパチンコ屋に並んでスロットを打ち、疲れた足をマッサージで癒やし、外食をして眠りにつく。完全に人間としてはデフレスパイラル、堕落の極みである。

当時、大学三年生だった私の背後には、就職活動という黒い影がひたひたと迫っていた。もっとも、講義にはろくに出ておらず、単位も絶望的に足りていない。卒業できるかどうかすら怪しい有様だったのだが。 それでも、スーツを着てサラリーマンになるという未来が、どうしても想像できなかった。いや、単にやりたくなかったのだ。

「自分にサラリーマンなんて絶対に無理だ。向いていない」

そんな根拠のない思い込みで、現実から目を背けていた。今思えば、いつまでも学生というぬるま湯に浸かっていたいだけの、ひどく甘えた性分だったのだろう。

そんな自堕落な日々の中、ふと、ある考えが脳裏をよぎった。

――今こんなにハマっているマッサージを、いっそ仕事にできないだろうか?

その時、遠い昔の記憶がふわりと蘇ってきた。幼い頃、祖父母の肩をたたいて、お小遣いをもらっていたあの温かい記憶だ。

『あんたは肩たたきが上手いねぇ。将来は、あんまさんになるといいよ』

目を細めて笑う祖父母の顔。 あの一言が、心の奥底で小さく燻っていた炎に油を注いだ。私は初めて、セラピストという職業を自分の未来として本気で考え始めたのである。

運命とは面白いもので、答えはいつも通っているその場所にあった。 いつものように『フットセラピー』で施術を受けた帰り際、フロントの隅に置かれたパンフレットが目に留まった。

【スクール生募集!】

その文字を見た瞬間、私は吸い寄せられるようにそれを手に取り、気づけば一日体験レッスンへと申し込んでいた。

実際の体験レッスンの記憶は、実のところ朧げだ。ただ一つ、強烈に脳裏に焼き付いているのは、スクールの社長の圧倒的な存在感だった。 見た目はどこかイカツイ雰囲気なのだが、口を開くと不思議なお姉言葉が飛び出す。それでいて、相手の心を鷲掴みにするような見事なトークスキル。

「やはり、成功してトップに立つ人間はどこか違う」と、妙に感心したものだ。

レッスンを終えて帰り道を歩く私の足取りは、いつになく軽かった。

「自分は今後、この道を進もう」

心の中で、はっきりとそう決断していた。 会社に入って歯車のようなサラリーマンになるくらいなら、自分の腕一本で生きていく。手に職を付けるんだ――そんな若さゆえの熱い思いだった。 (まあ、チェーン店に就職するなら、結局はサラリーマンと変わらないのだが、当時の私はそんなことには考えも及ばなかったのだから笑える)

この道で生きていくと決めたからには、中途半端は性に合わない。 私は、「大学を辞める」という大きな決断を下した。

もっとも、当時の大学へのモチベーションはゼロに等しく、留年もほぼ確定という惨状だったのだから、単にこれ以上通うのが面倒になったという後者の理由の方が圧倒的に強かったことは否定しない。もし真面目に単位を取っていたら、とりあえず卒業だけはしていただろう。

だが、自分一人の辞めますで片付く問題ではない。 まずは、高い学費を払ってくれている両親を説得しなければならない。そして、将来について真剣に考えなければならないお年頃の彼女にも。

恐る恐る親に打ち明けると、意外にもあっさりとした答えが返ってきた。

「まあ、それが本当にやりたいことなら、やってみればいい」

ただし、すぐに退学するのではなく、とりあえず休学という形にしておけという冷静なアドバイス付きで。 
うん、ごもっともだ。まだスクールに入ったわけでも、就職先が決まったわけでもないのだから。突っ走ろうとする愚かな息子の背中を、そっとフォローしてくれる。本当にありがたい親である。

次に、彼女への報告だ。 彼女は、愛知県の『SSK』と呼ばれる三大お嬢様学校の一つに通っていた……が、お嬢様とは名ばかりの「非・お嬢様」だった。私と同じようにスロットを打ち、麻雀に明け暮れる、お嬢様という言葉から最も遠い場所にいるような人だ。

彼女もまた、私の話を肯定的に受け入れてくれた。 そりゃそうだろう。これまでろくでもない自堕落な生活をしていた彼氏が、「真面目にスクールに通って就職する!」と宣言したのだ。応援しない理由がない。

そして、木々が色づき始めた十月のある日。 私は大学に休学届を提出し、セラピストへの道を切り拓くべく、スクールへとその第一歩を踏み出したのだった。

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